「グルーヴ(感)って何!?」
グルーヴ(グルーブ、groove)って音楽用語のなかでもとりわけ難しい概念の言葉ではないでしょうか?
日常会話でも比喩表現として「わたしたちグルーヴが合うね」なんて使われるほど一般的なワードではありますが、その実、本当の理解が難しい。
そこでこの記事では自分の経験から「グルーヴとは何か?」を解説していきます。
音楽を言語化するのはそもそも難しいですが、参考になったらうれしいです。
グルーヴとは?音楽の「ノリ」のこと
グルーヴとは「ノリ」と表現されます。
「ノリノリだね~」の「ノリ」ですね(糊 or 海苔じゃないですよ!(笑))
「ノリ」とは何かというと、一般的には「ウキウキする」とか「踊りだしたくなる」といったような感覚を言います。
しかし、そうなると静かでリラックスできるようなクラシックにはグルーヴがないのか?と言うとそうではありません。
優れた楽曲・演奏には必ず音楽の基本的要素である「リズム」「ハーモニー」「リズム」が高い次元で満たされています。
その意味で「踊れる音楽」と対をなすような「リラックスできる音楽」にも、やはりそれに応じた「リラックスできるグルーヴ」が存在しているんですね。
まずは単にノリノリの音楽だけを指してグルーブという概念を用いるのではなく、「優雅で壮大さを感じさせるグルーヴ」「リラックスできて眠くなるグルーヴ」などグルーヴには無限の種類があると理解します。
グルーヴ感のある演奏と、ない演奏の違い
さらにグルーヴをひも解いていくために、いくつか概念を紹介しながら解説していきます。
グルーヴには低音と高音の差異が必要
ミュージシャンには「クリックそれ自体にはグルーヴがない」という人がいます。
なぜかと言うとクリック音がつねに一定の音色だからです。
試しにクリック(メトロノーム)を適当に鳴らしてみて黙って聞いてみて下さい。
3分もすれば「うるせぇ!」と気が狂うはずです(笑)
このことから、音を音楽として楽しむには、ひとつの音と一定のリズムだけでは不十分ということがわかります。
メロディーやハーモニーはもちろん、リズム(グルーヴ)が必要なんですね。
もしクリックの音色を変えられるなら、低音と高音が交互に「ドンッタンッドンッタン」来るように設定してみて下さい。
これでずいぶんとノレる感じに聞こえますよね?(少しだけ音が音楽に変化した!)
少なくとも低音と高音の差異が必要というのは、グルーヴ発生の前提条件と言えるでしょう。
そう考えると、ドラムセットというのは本当によくできています。
低音(キック)高音(スネア)がデフォルトで装備されているんですから。
ドラムセットを使って、8ビートや16ビートを叩けばそれだけでグルーヴ発生の前提条件は満たしているんですね。
しかし同じドラムで同じリズムパターンを叩いても、グルーヴィなドラマーとそうでないドラマーがいる…。
その違いを説明するために続いてBPMについて説明させてください。
BPM(テンポ)とグルーヴの違い
BPM(Beats Per Minute)とは、1分間にどれだけ拍を数えるかを数値化する単位のこと。
曲の速さ、テンポのことですね。(BPM60は1分間で60回鳴らすということ)
わたしたちミュージシャンはしばしば「グルーヴを良くするために正確なBPMで演奏しよう!」と練習してしまいます。
これは半分正解で、半分間違いと言えますね。
なぜなら曲中にBPMが変化していっても(正確にBPMを維持しなくても)、グルーヴをちゃんと感じられる演奏は可能だからです。
例えばミスターチルドレン。
2:46からのサビと4:45からの大サビとでは明らかにBPM(テンポ)が速くなっているのがわかりますよね。
しかし大サビでグルーヴが崩壊しているでしょうか?
むしろ1曲をとおして聞いた時、大サビの方がグルーヴィで高揚感があるように聞こえないでしょうか?
このことから、グルーヴとBPM(テンポ)はまったく違う概念であり、必ずしもBPMを守ることがグルーヴの良しあしに直結しないとわかります。
もう少しわかりやすい例でいうと、アンコールの拍手です。
みんなでゆっくり拍手をはじめると自然にだんだんと早くなっていくじゃないですか?
実は人間はグルーヴを感じれば感じるほど高揚感を感じて自然とテンポが速くなっていくそうです。
ですからグルーヴィな良い演奏をしようと思った時、BPMだけに着目してもダメなんですね。
とは言え、どんな曲でも限界のテンポってあります。
「グルーヴに高揚してテンポアップするのはアリ」と前提に立っても、音楽的に破綻するテンポになってはダメです。(アンコールの拍手もあるところ破綻して最初のテンポからまたはじまりますよね)
音楽的に破綻しない限界を見つける意味でも、もうひとつ違った概念をご紹介します。
美しい「ストラクチャー」がグルーヴを呼ぶ
ストラクチャーとはリズムの構造のことを言います。
音符と音符との距離感、またその割合と言っても良いかも知れません。
正式な音楽用語ではないかもしれませんが、プロドラマーの三原重雄さんが発信してくれています。
参考サイトタイムとストラクチャー
ストラクチャーを説明するために(すごく)カンタンな図を示します。
例えば、一小節に3つの音符が並んでいるとしましょう。
これは音符同士が等間隔の1:1の割合で並んでいるとします。
ところが実際の人間の演奏は、等間隔でないことが多いです。
例えばこのような…。
仮に実際に両者の音を聞いてみた場合、当然感じるグルーヴは違うはずです。
これは一概に「正確な等間隔が良くて、ずれているのはダメ!」と言っているわけではありません。
演奏者の感性や曲の雰囲気、さらには聞く人の感性によって十分に気持ちいいグルーヴである可能性があるからです。(最初に示したようにグルーヴには無限の種類があるので)
ただしグルーヴが生まれない演奏があります。
それはストラクチャーが安定しない演奏。
例えばこのように1小節ごとに違うストラクチャーが登場したらどうでしょうか?
まるで歯並びが悪いガッタガタのリズムです。
もしこのように一小節という短い単位で違う(グルーヴをもった)ストラクチャーが飛び出してきた場合、聞いている方はノレません。
正確に言えば、いちいち違うグルーヴなのでどれにのれば良いかわからないのです。
逆に、表面上は等間隔でないストラクチャーでも、しっかり維持されていばノレる(可能性がある)はずです。
ここにミスターチルドレンが曲中にBPM(テンポ)が変化しても、グルーヴィな演奏ができる秘密があります。
つまりミスターチルドレンの演奏はBPMが変化しても、ストラクチャーが一定なんですね。
いわゆるハシる・モタるということが曲中で起きても、音符と音符の距離感の割合(=ストラクチャー)は完璧に維持されているわけです。(しかもメンバー全員が)
だからわたしたちリスナーも一緒に盛り上がっていけるわけですね。
例えばあなたがタガタメを練習して覚えて、仮に同じドラムセットで演奏してもなぜかグルーヴがない…ということがあるとします。
そのように「BPMは正確に守れているのに、なーんかグルーヴがないな…」と感じる場合は、BPMをかたくなに守ることに終始してしまい、実は「ガタガタなストラクチャー」である可能性が極めて高いです。
そもそも人は「0コンマ何秒後、次にくるグルーヴ」を予測できるから、目の前でリアルタムに演奏される音楽にノレるわけです。
ストラクチャーが乱れていると、グルーヴが予測できないので、お客さんの体はピクリとも動かない…。
つまり盛り上がらないライブになってしまうわけですね。(かなしい)
そのためにも演奏者は一定のストラクチャーを提供する必要があります。
「ストラクチャーガタガタの演奏なんてしないよ!」と言っても、コレが実はなかなかできていない奏者も多いんですね。
特にギターとかボーカルの場合、フレーズが複雑であるのでストラクチャーを自覚すること自体が難しかったりします。
逆にドラマーの人は直感的に理解できたのではないでしょうか。
そこで次はグルーヴを良くするための練習とその考え方についてご紹介します。
グルーヴの良い演奏をするための練習方法
ここまでをまとめると、グルーヴを良くするためには、
- 質の高いストラクチャーを体得する
- そのストラクチャーを意図をもって維持する
という2点ができれば良いことになります。
そのためには、やはりクリック(メトロノーム)を利用して練習するのが基礎的かつ効果的。
ただし、先ほど言った通りテンポキープ(タイムキープ)のためにクリック使うのではなく、ストラクチャーの補助線としてクリックを使うことです。
クリックは等間隔で正確なストラクチャーを出し続けてくれる機械と言えるでしょう。
多くの場合、「等間隔で正確なストラクチャー」は曲にとって妥当である可能性が高いんですよね。
また独自のストラクチャー(グルーヴ)を生み出そうとしても、そもそも正確なストラクチャーを理解していないと無理な場合がほとんどだと思います。
実際はムリに個性を出そうとしなくても、曲の雰囲気やテンポ、奏者の感性や解釈、さらにはバンドメンバーとの兼ね合いによって、クリックほど正確なストラクチャーには結果的になり得ないことが多いと思います。
ですから、まずはクリックを先生として基礎となる正確なストラクチャーを体得しましょう。
例えばクリックを16分音符までしっかり鳴らしてあげて、曲を練習してみて下さい。
自分が奏でるフレーズのどの音符がどの位置であるべきなのか(まだどの休符がどの位置であるべきなのか)を確認しながら、丁寧に練習してみると良いでしょう。
BPMを下げて練習するにも効果的ですよ。
- グルーヴとは「ノリ」である
- グルーヴには低音と高音が必要
- グルーヴはハシってもモタっても発生させられる
- グルーヴには適切なストラクチャーが必要
以上「グルーヴとは?グルーヴィな演奏をする方法」という話題でした。
難しい話でしたが、お役に立てたらうれしいです!